
1961年、芸術座。今から実に47年前にその記念すべき初演を迎えて以来、森光子が孤高の名演を刻みつづけてきた菊田一夫作の舞台『放浪記』が、今年も正月7日、新劇場シアター・クリエの第2弾の作品として、3ヶ月にわたるロングラン公演の幕を開けた。客席は満員御礼。まっさらな劇場で気持ちも新たに上演される歴史的名舞台を、誰よりも早く目にする機会に恵まれた600人の観客の、身熱と興奮が開演前の客席を埋めつくす。
休憩を除き、正味3時間10分の長丁場。林芙美子がその実人生を自伝的につづる小説『放浪記』をもとに、林と個人的な付きあいのあった菊田が容赦のない客観的視線から物語を編みあげる。そこにあるのは林芙美子という「生まれながらにして現実のなかの真実」を見抜いてしまう慧眼を宿す女の、甘く叙情的な哀しみなどとうに通り越した、身が震えるほど凄絶で静かな虚無感だ。
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