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コンペ入りした最新作『アキレスと亀』を引っさげてヴェネチアを訪れた北野武監督が、共演の樋口可南子とともに公式記者会見を行った。
北野監督いわく、この映画はいわば「芸術残酷物語」。裕福な家に生まれた少年、真知寿の人生は、両親を失った時、悲劇的な方向に変わる。しかし、どんな状況にあっても絵を描くことへの情熱だけは決して変わらなかった。犠牲を惜しまず画家として成功するために努力し続ける彼は、やがて妻や娘も不幸に陥れていく。彼の半生では周囲の人が何人か死に、彼自身も自殺を考える。
「この映画では、芸術のもつ麻薬的な部分も描かれている。でも、主人公はそうなってしまったとはいえ、芸術のために家族を巻き込む必要も、死ぬ必要もない」(北野)
子供時代の真知寿は子役の吉岡澪皇、青年時代は柳憂怜、中年時代は北野自身が演じる。中年時代の真知寿の妻を演じるのが樋口。この会見に着物で登場した樋口は、もともと芸術に興味などなかったのに夫をサポートして一緒に製作作業をする妻について、「最初に脚本を読んだ時は、こんなに夫に尽くす妻がいるんだと思いました」と語った。イタリアは初めてだそうで、「ここに来られてきょうはすごくうれしい。武さんに感謝しています。でも撮影中は、武さんが何の注文もしない人なので、毎日とまどいとの戦いでした」ともコメントした。一方で北野監督はヴェネチアの常連。今回、受賞するかどうかは意識していない。「4回コンペに出して、賞も2個もらった。監督賞ももらった。そんなにいいことがあると死んでしまう気もするしね。でも、栄誉に感じるし、よく選んでくれるなという感謝はある」(北野)
同作品は9月20日に全国にて公開される。
取材・文:猿渡由紀
『アキレスと亀』
9月20日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて公開
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