
MINERVA WORKS#1 『Live,Love,Drive.死神の精度』 撮影:伊東和則
羽場裕一、芳本美代子らが出演する舞台MINERVA WORKS#1 『Live,Love,Drive.死神の精度』が、18日、東京・紀伊國屋サザンシアターで開幕した。
《初日レポート》
原作は伊坂幸太郎の連作短編小説『死神の精度』。昨年映画化され、今年に入って既に一度舞台化されている人気の作品だ。今回は原作では6編ある物語のうち、“Live”“Love”“Drive”に当たる「死神対老女」、「恋愛で死神」、「旅路を死神」の3編を抽出。脚本に弾丸MAMAERの竹重洋平、演出にカムカムミニキーナの松村武を起用し、人間ドラマに長けた竹重の特徴と、松村独特のテンポの良さとコミカルな要素が合わさった舞台となった。
人間界に派遣された死神の調査部員である千葉(羽場)は、調査の対象となる人間を1週間観察し、その死を見定める役を請け負っている。「恋愛で死神」の話でその対象となるのは、ブティックで働く荻原(岡田達也)。自宅の近所に住む古川朝美(芳本)に恋する荻原は彼女にアタックするが、断られてしまう。彼女が荻原をストーカーの男と勘違いしたからだ。やがて誤解は解け、打ち解けるふたり。ついに古川の部屋での食事にこぎつけた荻原だったが……。
次は、母親を含む連続殺人の罪で警察に追われる森岡(畑中智行)を対象とした「旅路を死神」。彼は千葉を道連れに、車で十和田湖の奥入瀬を目指す。彼の目的は逮捕される前に、ある男に会うこと。彼が幼少期に受けた誘拐監禁事件の犯人グループのひとり、深津に会うことだった……。最後は、元売れっ子美容師の老女(芳本)が対象となる「死神対老女」。千葉を死神と理解し死期を感じている女は、千葉に若者を客としてできるだけ多く連れてきてほしいと頼む。一時的に繁盛する美容院。老女にはその日をどうしても若者でいっぱいにしたい理由があったのだった…。
この原作を舞台化するには、死神をどのように描くかが肝になる。死神を観客と同じ人間模様の傍観者として描いた本作では、主演・羽場裕一の演技力が光っていた。全身黒ずくめで、調査対象者の聞き手役に徹する羽場は特に大きな芝居はしない。彼のセリフの返し方ひとつで対象者の気持ちが上がったり下がったりする。淡々とセリフを発しているようでいて、物語全体を大きく動かしていく様は安心感すら覚えた。そんな傍観者の立場であった死神の羽場を、最後に絶妙な間合いで人間模様の只中に引っ張り込むのが芳本美代子。死を受け入れてシンプルになっていく老女を好演した。そのほか原作では気弱で落ち着きのない青年として描かれていた森岡をトラウマと向き合う青年として見せた畑中智行、動きを交えたコミカルな演技で荻原を多面的に見せた岡田達也。彼らふたりの羽場とのやりとりも面白い。
公演は紀伊國屋サザンシアターにて、11月29日(日)まで。チケットは現在発売中。
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