難しいミュージカルをシンプルに。主演・松岡充が難役を好演 2009/12/14 17:33配信

松岡充が主演する『Nine The Musical』が12月11日、東京・ル テアトル銀座 by PARCOにて開幕した。フェリーニの映画『8 1/2』をもとに1982年にブロードウェイでミュージカル化された本作は、主人公の男の内的世界を通して人間の愛と再生を描く物語。今回、演出・訳詞・上演台本を手がけたG2は、この難解な作品に簡潔さを求め大胆なアプローチを試みた。本来30数名必要なキャストを11人に限定、舞台は椅子と山台のみのシンプルな構造。最小編成の生バンドの演奏をバックに、複雑な人間模様をわかりやすく際立たせた。

著名な映画監督のグイド(松岡)は、仕事も私生活も行き詰まりを見せている。女優で妻のルイーザ(新妻聖子)に離婚を切り出された彼は、夫婦関係修復とクランクイン間近の映画の題材探しを兼ね、妻とともにヴェニスのスパ・リゾートへ行く。彼を待ち受けていたのは、マスコミ攻撃と愛人カルラ(シルビア・グラブ)のお誘い、そして映画プロデューサーであるリリアン(紫吹淳)からの仕事の催促。やがて内的世界と現実の世界の区別が曖昧になる彼は、子供の頃の自分に出会って……。

主演の松岡充は映画監督・グイドを自然体の演技で好演。女性たちからの要望や愛を上手く受け入れられない愚かしさと、どこか憎めない可愛らしさの両面を持つグイド像を作り上げた。1オクターブ以上もある音の高低、半音の上げ下げなどが組み合わさった難しい曲も、音域の広さを活かし伸び伸びと歌いあげていたのも印象的だ。また松岡を支える女優陣9名の顔ぶれの豪華さもこの作品の魅力のひとつ。新妻聖子はグイドの全てを包み込む芯の強い妻・ルイーザを、圧倒的な歌唱力と存在感で見せた。貴城けいは笑みを絶やさない癒し系の女優・クラウディアを上品に、紫吹淳はプロデューサーのリリアンをコミカルに、そしてシルビア・グラブは愛人カルラをセックス・アピール満載で演じ、それぞれ違った彩りを舞台に添えていた。そのほか樹里咲穂、入絵加奈子、浦嶋りんこ、今陽子、寿ひずるも各々個性の異なる女を演じ、応戦。この9人がひとり3～4役に扮し、出ずっぱりでアンサンブルまでこなすのだから、贅沢としか言いようがない。

子供時代のグイドが、友達の作り方は靴紐の結び方と同じくらい簡単だと歌う。「求めるだけなら、逃げられるだけ」。人間ドラマを的確に言い表したG2のセリフに、多くの観客は男女間をはじめとする人間関係の難しさを痛感したに違いない。東京公演は12月27日(日)まで。その後、1月9日(土)・10日(日)に大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA! でも上演される。チケットは現在発売中。また対象公演日限定で、食事付きの特別チケットも発売中だ。