初舞台の相武紗季も参戦。Piper待望の新作は観客参加型の爆笑劇 2010/4/27 昼12:10配信

Piper8度目の本公演となる『THE LEFT STUFF』が、4月25日に東京公演を好評のうちに終了。4月29日(木・祝)からは大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演され、名古屋、広島、仙台へとツアーを続ける。

海底調査員選考のため、“海の家”と呼ばれる実験施設に集められた7人の男女。海の家は密室で、そこには必要最低限の物しか用意されていない。不安に駆られる7人の耳に飛び込んできたのは、責任者と名乗る男の声。責任者は7人に、1週間の共同生活の中で、さまざまな課題を与えていくらしい。そこで徐々に明かされていく人間性。そして候補者たちの秘めたる思惑とは？

作・演出の後藤ひろひとは、今回これまでにないPiper作品に挑戦している。それは観客参加型の舞台。つまり観客は選考委員役となり、キャスト演じる候補者たちに、さまざまなお題を与えていくのだ。例えば候補者たちの食事のシーン。他の6人はただの牛乳なのに、そのうちひとりだけにコーヒー牛乳を与える。そのひとりを誰にするか？など。もちろん誰になるかはその日の観客次第。7人のキャストだけでなく、責任者役の後藤にも、一体誰にコーヒー牛乳が当たるか分からない。そんなドキドキ感とワクワク感が、劇場に予想だにしなかった笑いを生み出していく。

観客の意志で物語はさまざまな分かれ道を迎えるが、最終的には大きな一本道になっている。そこが後藤の脚本のうまいところ。狂言回し的な役割で舞台上にも登場し、横道にそれることはあっても、しっかりとひとつの作品として成立させていく。もちろんその横道にズレた時が、面白くて仕方がないのだが。

そんな即興的な芝居をやるためには、キャスト選びも重要になってくる。今回はゲストに相武紗季、岡田義徳、ガレッジセールの川田広樹が登場。舞台経験も豊富な岡田に、芸人である川田は文句ナシ。何を振られても機転を利かせ、すべてを笑いに昇華していく。相武はこれが初舞台となるが、意外にも嫌味な海洋地質学者という役どころがぴったり。また肝の据わったところもあり、そんなことまで！と思われるような課題にもどんどん挑戦していく。そんな相武の姿に、観客からは大きな拍手と笑いが。逆に川下大洋や腹筋善之介ら、Piperメンバーの方がテンパって見えたほどだ。

候補者に課せられるお題の数だけ、この舞台には物語がある。もちろんそこで生じる、ハプニングというプラスαも。二度、三度と足を運び、さまざまなバージョンを楽しみたくなる作品だ。

公演は、4月29日(木・祝)から5月2日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、5月8日(土)・9日(日)に愛知・名鉄ホール、5月11日(火)に広島・アステールプラザ 大ホール、5月13日(木)に仙台市民会館 大ホールにて。チケットはいずれも発売中。

取材・文：野上瑠美子