
『Somewhere(原題)』のソフィア・コッポラ監督(中央) (c)Kazuko Wakayama
第67回、ヴェネチア映画祭が9月11日に閉幕し、金獅子賞にソフィア・コッポラの『Somewhere(原題)』が選ばれた。
今年はコンぺに日本から『ノルウェイの森』と『十三人の刺客』が入り、ツイ・ハークの『Detective Dee』とサプライズ上映されたウォン・ビンの中国映画『The Ditch』を合わせると例年になく4本のアジア映画が揃ったが、賞には絡まなかった。また評価の高かったチリ映画『Post Mortem』と、フランソワ・オゾンのコメディ『しあわせの雨傘』も無冠に。そのせいか、特に金獅子賞の選考に対して審査員長クエンティン・タランティーノの独断が囁かれたが(※ソフィアはタランティーノの元恋人)、受賞後の会見で彼は「審査員の満場一致の結果」であることを強調した。
派手なハリウッド・ライフを送ってきたスターが娘との交流のなかで自分を見つめ直す様子を描いたソフィアの『Somewhere(原題)』は、簡潔で雰囲気を大事にする彼女らしいスタイル。強烈にエモーショナルでもポリティカルでもないところに、“金獅子”というタイトルに対する意外性があったのかもしれない。ただそういう点で誰をも唸らせるような作品が今年はなかったことも確かだ。ジュリアン・シュナーベルがイスラエルとパレスチナの問題を扱った『Miral』は評価が分かれたし、審査員特別賞と最優秀男優賞(ヴィンセント・ギャロ)を受賞したイエジー・スコリモフスキの『Essential Killing』も、タリバンの逃避行を描きながらもアート・フィルムという印象が強い。監督賞と脚本賞を獲得したアレックス・デ・ラ・イグレシアの『A Sad Trumpet Ballad』は、スペインの市民戦争を背景にしながら騒々しくすべてが過剰な描写でこちらも評価が分かれた。
『ノルウェイの森』は映像美や俳優の演技が優れているという評価を受けたものの、133分はやや冗漫という声が上がった。かたや『十三人の刺客』は、「黒澤明を彷彿させるような面白さ」と大きな反響を得、正式上映でも大いに盛り上がっていたが、時代劇というオーソドックな枠組みが逆に個性を求める審査員たちの判断への足枷になったのかもしれない。
女優賞は、『ブラック・スワン』(原題)のナタリー・ポートマンや『しあわせの雨傘』のカトリーヌ・ドヌーブなどベテランを尻目に、ギリシア映画『Attenberg』で映画デビューを果たした新人、アリアンヌ・ラベッドの手に渡った。
主な受賞結果:
金獅子賞/ソフィア・コッポラ『Somewhere(原題)』
審査員特別賞/イエジー・スコリモフスキ『Essential Killing』
監督賞/アレックス・デ・ラ・イグレシア(『A Sad Trumpet Ballad』)
最優秀男優賞/ヴィンセント・ギャロ(『Essential Killing』)
最優秀女優賞/アリアンヌ・ラベッド(『Attenberg』)
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