
稽古場より。撮影:星野洋介
2月10日(木)より東京・サンシャイン劇場で上演される『GQ Gentleman Quality …紳士の品格… ~Chocolat ヘンゼルとグレーテルより~』のリハーサルが佳境を迎えている。公演を目前に控えた、その稽古場を取材した。
2009年6月に上演された『GQ』の第2作目となるこの作品は、総勢30人もの出演者による、壮大なダンスエンターテインメントだ。演出・振付の新上裕也のもと、バレエ、JAZZ、HIPHOPなど、各分野で輝かしいキャリアを築いてきた男性ダンサーが集結。なるほど、稽古場には、総動員されたダンサーたちの圧倒的なオーラと熱気が充満している。
「一流とはこういうことか、と感じました。休むことなく、常に“それ以上”を追究する皆の姿は、感動的です」と語る新上。そこには、佐々木大、法村圭緒、中島周をはじめ、バレエの大舞台で主要な役柄を踊ってきたダンサーの姿もある。JAZZやHIPHOPの名手たちと、同じ空間で、同じ振りを踊っているのだ。彼らの間には、スタイルの違いによる違和感など微塵もない。新上が力を注ぐのは、「彼はバレエの人、彼はJAZZの人、と捉えず、皆が一人の表現者として、同じ空間、同じメロディ、同じシチュエーションで表現すること」だ。作品のモチーフとなったのは、童話「ヘンゼルとグレーテル」。この物語には「欲望や正義、人生で必ず出会う究極の選択──表現したい要素がすべて組み込まれている」という。
新上の穏やかな声が、次々と振付のディテールを提示する。複雑なリズムも、誰もが瞬時に身体に取り入れ、次に備えアンテナを張る。過度の緊張感も、必要以上のリラックスもない。その場に漂うのは、一流の表現者ならではの、まさに“品格”だ。
創作過程では、増田哲治(Tetsuharu)、青木尚哉、吉本慎吾も振付に参加。「僕では想像できないことが生まれる」。新上は彼らとの協業に喜びを見出す。ヘンゼル役に配されてもいる増田も、「ダンサーがより素敵に見えるダンスを具現化すること、に尽きます。未知の“その人らしさ”をどう引き出すか、が課題」。コンテンポラリーダンスで独自の存在感を示す青木は、「経歴が違えば方法論も異なる。不調和も、乱れることもあるが、最終的には美しいメロディを目指す。楽しみながら取り組んでいます」という。また、「世界中の、生ある人全員に観ていただけたら!」と目を輝かすのは、バレエ界の逸材、吉本。増田の兄、増田俊郎が手がけたオリジナルの音楽に感動、涙したという豊かな感受性で現場に臨む。
そんな個性と才能がひしめく稽古場で、「いまでなければ実現しない舞台」と語る新上。ヘンゼルたちが行き着く先は、まだ誰も見たことのない、驚きに溢れた“お菓子の家”となるに違いない。
東京公演は2月10日(木)より13日(日)まで。チケットは現在発売中。
取材・文:加藤智子
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