
撮影:川野結李歌
古代ローマを舞台に繰り広げられるウィリアム・シェイクスピアの政治闘争劇を、女性キャストのみで立ち上げることが話題を集めているパルコ・プロデュース2021『ジュリアス・シーザー』。本作の演出を務める森新太郎と主人公ブルータスを演じる吉田羊に、稽古前の心境を尋ねた。
高潔な魂を持つブルータスが、友人でありローマの礎を築いた英雄シーザー(シルビア・グラブ)を殺害するまでの苦悩や葛藤、そして事後の悲劇を描いた本作。「役者の鍛錬が求められるシェイクスピアを敬遠してきた」と率直に語る吉田は「彼の演目にふさわしいかどうか、作品に選ばれないと舞台に立てない感覚がありました」「これを機に挑戦して自分を更新していきたい」と森のオファーに対して背筋を伸ばす。
キャスティングの意図を問われた森は「羊さんを別のフィールドへ引っ張り出したかった」と笑う。吉田の強みを「リアリスティックな抑えた芝居」と捉え、「そもそも抑えた芝居があれだけ魅力的なのは、心の中に激しい何かを秘めているから」と分析。「思いのありったけを叫ぶシェイクスピア劇で羊さんの新境地をお見せできたら」「これだけ叫んでも胸の内がわからないブルータスの底知れなさも感じさせてくれそう」と期待を寄せる。
男性の登場人物が多い本作を、オールフィメール(全員女性)で届けることの意義を「虚構性を高めた方が、日ごろ我々を取り巻く規範や約束ごとから解放される」とした森。吉田も「男女の役割を固定するようなセリフが森さんによりほぼカットされている」と戯曲を読んだ感想を述べ、「性別という概念がなりを潜めて、対人間同士の会話として響くのではないか」と予想する。
こと衣装に話題がおよぶと、二人は大盛り上がり。森が「当時の男性フォーマルといえば例えば鎧だけれど、シェイクスピア作品では言葉が鎧みたいなもの」「言葉以外の要素はなるべく削ぎ取りたいから抽象的なのがいい」とアイディアを口にすると、吉田も「賛成!中性的な衣装がいいですね」と反応する。そしてブルータスの人物像について「私利私欲のない“ミスター正義感”だけれど、彼本来の魅力は人間的な優しさや弱さ」と語り、「シーザー殺害にいたる感情のアプローチを大切に演じられたら」と述べ、森と吉田の演劇に対する尽きせぬ思いを語り合ったインタビューになった。
公演は、10月10日(日)~31日(日)に東京・PARCO劇場にて。その後、11月に大阪・山形・福島・宮城・富山・愛知と巡演する。東京公演のチケット一般発売は、8月28日(土)10時よりスタート。
取材・文:岡山朋代
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