
2020年、コロナ禍で6月の開幕前に全公演中止となった舞台『アルキメデスの大戦』が、2年を経て上演される。天才数学者の視点から第二次世界大戦を描く三田紀房の漫画を原作に、2019年夏公開の映画を原案として初めて舞台化。脚本と演出は、歴史をもとにした骨太な作品に定評のある劇団チョコレートケーキのコンビだ。独自の視点で史実に隠されたドラマを紡ぐ古川健の脚本に、人間の心情を丁寧に描く日澤雄介の演出。映像とはまた違い、生の演劇で今作を担うのにふさわしい布陣と言える。主演の天才数学者・櫂直(かいただし)に鈴木拡樹、海軍少将・山本五十六は神保悟志、ほかに宮崎秋人、小須田康人、岡田浩暉らが出演。東京開幕を控える9月下旬、神保が関西公演に向けリモート会見を行った。
神保は映像での活躍が知られるが、劇団の養成所出身で舞台出演も多い。「舞台は毎回楽しいです。実際にお客様と接することができるのは何にも代えがたい素晴らしいこと。今回はセリフ劇で大変難しい舞台ですが、毎日ワクワクしています」と語る。「説得力が一番の魅力」と言う原作の漫画を読み、映画も観た上で臨む舞台版は「脚本や演出は非常に原作に忠実というイメージです。コンパクトに凝縮されていますが、バックボーンはそのままきっちり描かれていると思う。映像との比較でなく舞台作品としてご覧になり、なるほど、と納得していただけるものになっています」。
物語は1933年、軍拡路線の海軍省。今後の海戦は航空機が主流と考える山本五十六は、巨大戦艦建造を押す海軍少将・嶋田と造船中将・平山と対立。彼らの異常に安い建造費の謎を暴くべく、変わり者だが数学の能力は群を抜く櫂を海軍へ呼び寄せ、決戦会議で対決する。スリリングな頭脳戦となる決戦会議は手に汗握る。「男のドラマで、そこが見せ場。役の関係性をしっかり描けていて、熱く熱く演じられていると思います。毎日、稽古場で火花を散らしています」。
山本五十六を演じるに当たり「英雄という一面的な人物像に縛られず、喜怒哀楽も挟み込んできちんと描きながら、自分なりの“人間”山本五十六を演じたい」と話す神保。舞台セットはシンプルで、転換も多くはないが「セリフの中で観客の皆さんがいろいろなものを想像できるようなお芝居になっていると思います。生でこそ感じられる人間のすごさや男同士の戦いを観てほしいですね。人間の心の変容の仕方、戦争へ向かう社会の危険性、そういったものを感じていただければ最高かな。ぜひ、劇場で生の『アルキメデスの大戦』を堪能していただきたいと思っています」。
公演は10月1日(土)から17日(月)まで東京・シアタークリエ、10月21日(金)から23日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。その後、静岡、愛知、香川、広島を巡演。チケット発売中。
取材・文:高橋晴代
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