
撮影:田中亜紀
佐々木蔵之介が主演を務める『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』が、東京・東京芸術劇場 プレイハウスで11月23日(水・祝)に開幕する。これに先駆け、報道陣に向けた取材会とゲネプロが行われた。
今年で生誕400年を迎えたフランス古典喜劇の劇作家モリエールによる『守銭奴』を、秋山伸子の翻訳、ルーマニアから来日しているシルヴィウ・プルカレーテの演出で立ち上げる本作。あらゆることに金を出し渋り、召使い(手塚とおる他)に始まり息子(竹内將人)や娘(大西礼芳)にまで極度の倹約を強いる“どケチ”の主人公アルパゴン(佐々木)が、息子の恋した相手(天野はな)と再婚したいと申し出たことから始まる騒動の様子がコメディタッチに描かれる。
ゲネプロ後の取材会には佐々木、執事役の加治将樹、竹内、大西、手塚の5人が参加した。2017年にタイトルロールを演じた『リチャード三世』以来、プルカレーテとは2度目の創作となった佐々木。「かっこいいセリフがひとつもない」とボヤきつつ、「いちばん最初にプルカレーテから“アルパゴンは悲劇の人”と言われました。独りで金を手に入れても寂しいですよね。社会と隔絶されて、振り上げた拳を降ろせなくなってしまった猜疑心の強い怪物」と役人物の解釈を語る。
その佐々木と対峙した竹内は「蔵之介さんの瞳には狂気が宿って、体中にたぎる正体不明の怒りが空気を通じて伝わってきました。実際に恐れながら息子クレアントを演じています」とコメント。一方で大西は「こんなお父さんですが、私の父であることに変わりない」と素朴に述べ、報道陣の笑いを誘う。「この考えをいつも大切にしつつ、横たわる現実を受け入れながら娘エリーズになっています」
『真夏の夜の夢』(2020年)でプルカレーテ演出に触れている加治は、返し稽古を確認しないプルカレーテに触れて「プルさん帰宅後にキャストだけで復習した成果を翌日お見せする瞬間がスリリングでした。想像の斜め上からアイディアが飛んでくる」と稽古を振り返る。佐々木と同じ『リチャード三世』に参加した手塚は「日本人にとって自然な生理をどんどん削ぎ落とされ、ワケのわからない境地に到達させてくれる大巨匠。本当に贅沢な体験を、ぜひ皆さんにも」と観客にプルカレーテ演出の魅力をアピールした。
ゲネプロ上演時間は、約120分(休憩なし)。佐々木は、アルパゴンの過剰などケチぶりと強欲さを“老害”の百科事典ともいえる多様さで展開し、周囲を愚弄する。かと思えば盗まれた金の入った箱を慈しむように抱える菩薩のような表情を見せるひと幕も。いずれにせよフライヤービジュアルとは異なる卑しい風貌が、アルパゴンの得体の知れなさに拍車をかけていた。
東京公演は12月11日(日)まで。その後、2023年1月にかけて宮城・大阪・高知と巡演する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代
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