
真琴つばさ
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』をコテコテのオール関西弁にして大胆に翻案した、歌って踊る音楽劇『歌うシャイロック』が京都・南座にお目見えする。作・演出は『焼肉ドラゴン』など、社会的なテーマに笑いとけれん味を交えた作品が特徴の鄭義信(チョン・ウィシン)だ。鄭の作品に初出演する真琴つばさに話を聞いた。
『歌うシャイロック』は過去にソウルや神戸で上演。「シェイクスピアはお堅いイメージがあって、ちょっと構えてしまう自分がいました。でも今回は全編関西弁なので、すごく身近に感じて、これいつの時代の話? 最近ちゃう? と(笑)。鄭さんが描く世界を一緒に作っていけるのがすごく楽しみです」とワクワクしている。元宝塚歌劇団トップスターの真琴、関西弁には慣れているはずだが、「あれは宝塚弁ですから(笑)。今年、3カ月で英語のジャズの楽曲を13曲覚えたので、それを考えると、今回は話したことがある関西弁。難しいですが頑張ります」と意気込む。
真琴が演じるポーシャは、貴族パッサーニオの求婚相手。彼は恋の成就のために、親友アントーニオに金の融通を頼み、アントーニオは金貸しのシャイロックからお金を借りる。ポーシャは、“求婚の試験”に合格した相手ではないと結婚できないという父親の遺言に縛られている。その運命を嘆きつつも、シェイクスピアはポーシャを芯があり自分の考えを持った革新的な女性として描いている。「今回はより現代的になっているんじゃないかと。刺さる言葉がすごく多くて、原作でポーシャが願っていた、女性が権利を持って生きていける時代にやっとなりつつある。でも、一番の違いは年齢ですね(笑)。原作より30歳ぐらい上で50代の設定。若い人が演じたらただのハッピーエンドですが、人生経験を重ねたポーシャだからこそ、彼女の決断が重みを増してくるんです」。
シャイロック役の岸谷五朗とも初共演を果たす。「岸谷さんとは目や眉毛のあたりの“顔質”が似ているんですよ。特にすっぴんだとよく似ている(笑)。同じタイプの顔の男と女の境遇が舞台では逆になっていく。そこが裏の楽しみにもなると思います(笑)」と意外なポイントを教えてくれた。
悪役のイメージが強いシャイロックだが、ユダヤ人として差別されてきた彼の悲しみに胸を突かれる。「人種的なことではなく、シャイロックの生き方が嫌だったというアントーニオのセリフがあり、同感です。彼はあくどすぎるんですが、そうなる理由がある。今回、そこが浮き彫りになっているんです」。ラストは鄭らしく、原作とはまた違いグッと胸に染みる。「お客様の気持ちがレーザー光線のように散ったり集まったりして揺れるはずです」。
公演は2月9日(木)から21日(火)まで京都・南座、2月25日(土)から27日(月)まで福岡・博多座、3月16日(木)から26日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケット発売中。
取材・文:米満ゆう子
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