
撮影:面高真琴
ロームシアター京都が、クリエイターとともに、時代を超えて末永く上演される劇場のレパートリー作品を製作するプロジェクト「レパートリーの創造」。2017年にスタートした本シリーズの中で今回再演される『シーサイドタウン』は、その第4回として上演された作品。現在、東京を拠点に活動する松田にとって、京都で自身の演出作品を上演するのはKYOTO EXPERIMENT 2010での公演以来、約10年ぶりのことでもあった。第6回を迎える今回は その続編ともいえる新作『文化センターの危機』と共に2作品同時に上演する。公演に向けて、松田に話を聞いた。
「長崎という地域は、私自身の出身地であり、自分が抱えてきたモチーフ、テーマでもあり、それをドラマ演劇としてもう一度作品として取り上げていきたいという欲求がありました。“マレビトの会”を6年間やってきて小休止をして、今やっていることを検証していきたいという思いも。そんな時にロームシアター京都からお話をいただき、2021年に『シーサイドタウン』という作品を上演することができました。これは“レパートリーの創造”という企画の一環であり、複数作品を制作できる機会をいただけるとのことでしたので、それが今回『文化センターの危機』という作品になりました」。
『シーサイドタウン』は長崎にある海辺の町を舞台にし、血縁関係を中心に描かれた物語。「ちゃぶ台がある海辺の一軒家(日本家屋)の居間を中心点として設定したうえで、そこで家族が崩壊したさま、そしてそこにある保守化した異様なコミュニティ、そんな海辺の町から一度外に出て戻ってくる人物が感じる閉鎖空間」が描き出された。
そして新作『文化センターの危機』は松田自身の生まれ故郷・平戸市周辺をモチーフに、「中心から場所を拡散させながら、どんどん変容していく人物の視点と、地域の濃密でわけのわからない関係に縛られ、場所を定点で見据えている濃密な人間たちの視点。それらの関係を描いた群像劇」になるという。
文化センター、港、山でのキャンプを舞台に設定し、『シーサイドタウン』での中心点を設定することとは対照的に場所がどんどん移動しながらそこに点在する個々の視点が描き出されていく…。照明にそれほど変化がなく、音響もほとんど使わず、衣装も同じのこの2作は『シーサイドタウン』に初演から出演する俳優6名に、新たにオーディションで選ばれた俳優1名を加えて上演される。
<海辺の町>を舞台とするふたつの物語は、『夏の砂の上』『坂の上の家』という初期作での長崎の風景、「マレビトの会」での非物語化という方法論をも踏まえ、進化し続ける松田作品の魅力、そして現代演劇の新しい姿を確認できる貴重な機会となるに違いない。
公演は2月22日(水)から26日(日)まで、ロームシアター京都 ノースホールにて。チケット発売中。
取材・文:安藤善隆
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