
撮影:江隈麗志
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)率いるナイロン100℃が、2023~24年に結成30周年を迎える。そのアニバーサリーイヤーとして2本の本公演を予定、1本目を飾るのがこの『Don't freak out』だ。そこで劇団員の松永玲子、村岡希美のふたりに話を訊いた。
実は2020年冬にザ・スズナリ(※東京公演)で新作劇団公演を上演予定であったが、コロナ禍の影響により中止に。それだけに今回の上演決定に松永は「非常に嬉しいです」と顔をほころばせる。また村岡が「ナイロンがスズナリで出来るということが本当に嬉しいです」と話すように、なんとナイロンの本公演がスズナリで上演されるのは26年ぶり。その数字をふたりに告げると、「えー!」と目を丸くする。
ナイロンのホームグランドといえば下北沢 本多劇場だが、スズナリの大きさはその半分程度。もちろん客席と劇空間の密度はより濃くなり、松永は「試されている感じがします。そこでやるだけの体力、気力、知力をお前は備えているのか?と。それはそれは恐ろしい空間」と表現する。だがKERAのもと、30年近く演劇人として切磋琢磨してきたふたり。26年前のスズナリでの公演『カメラ≠万年筆』では、まだ新人だった松永と村岡が、コンビのような役どころだったとも。それだけに村岡は、「すごく感慨深いですし、聖地スズナリでの上演ということで、“燃え”と“萌え”の両方でワクワクしています」と声を弾ませる。
本公演としては前作『イモンドの勝負』同様、KERAの書き下ろし。だがその作風は一転、ホラーになるそう。「そう」と断定しないのは、その行く先はKERAのみぞ知るところゆえ。松永と村岡曰く「時代設定としては大正、もしくは昭和の初期ぐらい。基本的には不条理劇だが、『イモンド~』のように笑いに特化したものではなく、シリアス路線。このふたりの役どころはある屋敷で働く女中の姉妹」。稽古と執筆を同時進行するKERAの創作法を知り尽くしたふたりは、稽古しながら次第に現れてくる作品世界を前に、その予測不能な状況すら楽しんでいるようだ。
松永と村岡という巧者ふたりががっつり絡む役どころは、実は『カメラ≠万年筆』以降、そう多くはない。それだけに姉妹ふたりを中心にした新作、しかも聖地スズナリでの上演。さらにスズナリでの東京公演後、ナイロンとしては25年ぶりの大阪・近鉄アート館での上演を予定。ベテラン劇団による贅沢な劇空間を近距離で体感出来る貴重な機会、見逃すにはあまりに惜しい。
取材・文:野上瑠美子
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