
撮影:田中亜紀
今や新国立劇場によるフルオーディション企画で4月18日(火)より二部構成で上演される「エンジェルス・イン・アメリカ」。3月半ば、稽古場の様子を取材した。
スピルバーグ映画の脚本家としても知られるトニー・クシュナーが1991年に発表し、ピュリツァー賞、トニー賞にも輝いた本作。上村聡史を演出に迎え、1980年代半ばのニューヨークを舞台に、同性愛、エイズ(※当時、エイズは同性愛者が罹患する不治の病と考えられていた)、人種問題、信仰、政治などアメリカが抱える闇や苦悩を群像劇として描き出す。
この日の稽古で行われたのは第二部の終盤。エイズ患者であるプライアー(岩永達也)、プライアーの恋人だったが、彼がエイズに罹患したことを知り、感染の恐怖から彼の元を去ってしまったルイス(長村航希)が公園で再会するシーン、そして、プライアーが天使(水 夏希)と対峙し、戦うクライマックスのシーンが行われた。
タイトルにもある“天使”が実際に登場するのが、本作の大きな特徴のひとつ。80年代半ばの時代背景をベースに様々な社会問題を、実名を交えながらシリアスに描いていく一方で、ダークファンタジーのような壮大かつ幻想的な展開を見せる。
公園でのプライアーとルイスの再会のシーンは、現実を生きる人間の愛や憎しみ、葛藤を凝縮した会話劇となっており、ひとつひとつの言葉のニュアンスにいたるまで大切にした上村の精緻な演出が光る。
一方のクライマックスシーンはファンタジー要素の最も色濃いシーンのひとつ。舞台装置や音響を含め、壮大なスケールで超越した世界を舞台に、「生きる中毒」、「僕はもっと生きたい!」といったプライアーの言葉にのせて、生命への賛歌が力強く描き出される。
他にも、辣腕弁護士として成功を手にするもエイズに罹患するロイ(山西惇)、ジョーの母親で敬虔なモルモン教徒であるハンナ(那須佐代子)、同じくモルモン教徒の裁判所書記官ジョー(坂本慶介)、ジョーの妻で薬物依存のハーパー(鈴木 杏)、元ドラァグクイーンの看護師ベリーズ(浅野雅博)など、実力派の俳優陣が魅力的な人物たちを演じている。
たった8人のキャストで、上演予定時間は第一部、第二部、それぞれ4時間で計8時間!現代にも通じる混乱と分断の時代の中で、彼らがどのように人生に向き合うのか? 天使は何をもたらすのか? 壮大な物語の完成が楽しみだ。
「エンジェルス・イン・アメリカ」は新国立劇場小劇場にて4月18日(火)より上演。愛知・兵庫公演あり。
文:黒豆 直樹
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