
日本のみならず、世界中のファンから熱狂的に支持されるアニメ『エヴァンゲリオン』。その世界観を継承しつつ、舞台作品として創出する『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』が、注目の新劇場THEATER MILANO-Zaのこけら落とし公演として上演される。5月6日(土)の初日を前に、都内某所の稽古場に潜入。そのクリエーションの一端を垣間見せてもらった。
誰もが予想だにしなかったエヴァの舞台化に挑むのは、こちらも世界的な人気を誇るシディ・ラルビ・シェルカウイ。ダンサーらとの身体性の高い、そして美しい劇空間の作り手として知られ、演出のみならず構成・振付も手がける。だがそんなラルビをもってしても、やはりエヴァを舞台化するのはたやすいことではない。稽古場では日々台本の練り直し、また動きの調整などが細かく行われていた。
作品が難解であれば難解であるほど、稽古場には少し嫌な緊張感が漂うこともあるが、不思議とここにはそれがない。動きの確認中、役者に対して「この5分の間に(それなりの量がある)新しい台詞覚えちゃってね。……なーんちゃって」といったラルビのちょっとした冗談と柔らかな雰囲気、なによりカンパニーのラルビへの信頼感と新しいものにチャレンジしているというワクワク感が、この場の空気を贅沢に満たしているからだろう。
見学開始時は17場の稽古中。窪田正孝演じる渡守ソウシと石橋静河演じる霧生イオリが、作品の核へと向かっていく劇中でも重要なシーンだ。役名からもわかるように、本作は舞台版のオリジナルストーリー。しかし原作との共通点も多く、特にこの舞台版でより明確に浮かび上がってくるのが、この地球上における“子供”の存在について。そしてこのシーンでは、そんな子供を巡る衝撃の事実が明かされて――。
もちろんその内容は本番までのお楽しみだが、目を見張ったのは窪田と石橋のしなやかな体の動き。バーからバーへの移動が非常に軽やかで、ラルビも「とても美しかったです」とコメント、満足気な表情を浮かべる。また稽古場のいい空気感を生み出しているもうひとりの貢献者は、間違いなく窪田。芝居や動きで現場を引っ張るのはもちろん、待機中にはダンサー陣にも積極的に声をかけ、思いがけないオーバーな動きなどで笑いを誘う。理想的な座長と言えるだろう。
エヴァは?使徒は?と気になる点は多々あれど、この日の見学はここまで。このカンパニーから感じた期待感を胸に、劇場に向かう日を楽しみに待とう。
取材・文:野上瑠美子
チケットぴあに掲載されているすべてのコンテンツ(記事、画像、音声データ等)はぴあ株式会社の承諾なしに無断転載することはできません。
Copyright c PIA Corporation. All Rights Reserved.