
Joe Hill-Gibbins (C)Sandra Then
イギリス出身の気鋭の演出家で、日本でもナショナル・シアター・ライブ『リチャード二世』の上映などで注目を集めるジョー・ヒル=ギビンズ。彼と日本人キャストによる初タッグが実現、アーサー・ミラーの傑作『橋からの眺め』に挑む。そこで初来日中のギビンズに、現段階の構想を訊いた。
この取材前の数日、日本の俳優たちとワークショップを行っていたというギビンズ。「とても素晴らしい3日間でした」と切り出し、「『橋からの眺め』のいくつかのシーンを抜粋して彼らと取り組んだのですが、例え文化が違っていても、この戯曲が我々に語りかけるものが多いということを改めて確信しました」と満足気な表情を浮かべる。
物語の舞台となるのはアメリカ・ブルックリン。波止場で人夫として働くエディのもと、シチリア系の違法移民である従兄弟家族がやって来る。だがその弟が、エディの溺愛する姪と恋に落ちてしまい…。「この戯曲が模索する領域」とギビンズが語るのは、「まずは家族と生きていくことの大変さ。あとは“忠誠心”と“裏切り”ということへの問いかけ。そして性的な欲求。これら私自身がこの戯曲に対して感じ、反応したことを、日本のお客様も同じように感じ、反応してくれるかもしれない。そう今回のワークショップを通じ知れたことは、非常に心強く、励まされる思いでした」
さらに本作に出演予定の3人の俳優とはすでに話し合いの場が持たれたそうで、「私の役割のひとつに、俳優たちがどんな方々なのかを探り、彼らが創作をする上でなにが必要かを考えることがあります」と、演出家としてのスタンスを明かす。そしてそれはもちろん単純なものではなく、「俳優によっては対話を必要としている人もいれば、それを嫌がる人もいますし、役の内面を知りたい人もいれば、そういったことにまったく興味がない人もいます。その中で私はサッカーチームのコーチのように、一人ひとりの能力を引き出すためにはどうすればいいかと考える。それは大変なことでもありますが、その根底には“人間を理解する”ということがあるので、非常に魅力的です」
自らの演出法について、「古い戯曲にありがちなパターンのようなもので観る者の視界をふさいできた埃を吹き払い、現代の観客に向け、生き生きとした作品に作り変えること」と語るギビンズ。アーサー・ミラーの不朽の名作が、ギビンズの手でどう現代で生まれ変わるのか。そこにはきっと新たなる劇体験が待っているはずだ。
取材・文:野上瑠美子
▼PARCO PRODUCE 2023 「橋からの眺め」 A View from the Bridge
公演日程:2023/9/2(土) ~ 24(日) 東京芸術劇場 プレイハウス 他 北九州、広島、京都にて上演
作:アーサー・ミラー 演出:ジョー・ヒル=ギビンズ
[出演]伊藤英明 / 坂井真紀 / 福地桃子 / 松島庄汰 / 和田正人 / 高橋克実
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