
撮影:塚田史香
高羽彩が脚本・演出・主宰を務めるプロデュースユニット「タカハ劇団」。最新作『おわたり』では主演に早織を迎え、ホラーに挑む。この作品を、早織は「ホラーって、例えば悲しさだとか、人間の感情により向き合うことができるような気がします。この作品にある愛はピュア、でも無垢ではなく危険なにおいを孕んでいる」と語る。それに対し、主人公・四方田稔梨に早織を起用した理由を、高羽は「良い意味で、早織さんはホラーが似合う佇まい。華奢だけど意思は強そうで、そのアンバランスさが、恐怖体験の中に放り込まれた時にどうなるのか。ただ怖くて震えているだけではなく、物語を引っ張っていってくれる」とする。
ふたりのお気に入りのシーンを尋ねてみると、高羽は「どこも好きですが、稽古していてすごく楽しいのは途中で登場人物が全員出てくるシーン。俳優の個性も役柄の個性も出ていて、しかもそれがぶつかり合っている。ホラーだけどこんなに楽しいシーンが描けてよかったと思うし、お客様にも注目していただきたい」、早織は「⻄尾友樹さんが演じる蝦草紅雄が、民俗学者である自分の仕事について語る場面がとても好きです。民俗学の存在意義が、そのまま文化の存在意義と重なっていて。お芝居を創る我々の仕事にもつながっているし、この作品のテーマの一つでもある。すごく心に響きました」とのこと。高羽も重ねて「人文学系の営みと演劇には抱えているジレンマや恐怖も含めて通じ合うものがあると思います。そのシーンを書いて、紅雄がこの作品に存在している意味が腑に落ちた」という。
また、高羽は “かわいそう萌え”があり、「今回はかわいそうな人がいっぱいなのでずっと萌えてます(笑)」。特に紅雄は、ある意味で稔梨とダブルヒロインだとか。怖さに、愛、萌えも含めてさまざまな要素を楽しめそうだ。
早織が「かわいそうな人たちの話なのに、どこかカラッとしていて湿っぽくない。絶妙な塩梅を楽しんでいただきたい」と話せば、高羽も「映像は使わず、古式ゆかしい演劇の技術によってホラーを成立させることが今回のひとつの目標。それがどこまでできているか、見に来ていただければすごく嬉しいです。それに “人の死”に触れるホラーだからこそ描ける人間ドラマがあるし、そこに演劇の可能性を感じていただければ」と上演へ意欲を語る。
新宿シアタートップスでの怖くて面白い夏は、7月1日(土)から。
取材・文:金井まゆみ
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