
舞台『上にいきたくないデパート』
舞台を観終わったあと、劇場を出るとなんだかまだ舞台が続いているような気分になるかも!? 8月21日、東京・日本橋・三越劇場にて、舞台『上にいきたくないデパート』が開幕した。
舞台となっているのは老舗デパート・成富百貨店。人当たりがよく、誰からも好かれるデパートのコンシェルジュ・小木曽(今野浩喜)にある日昇進の話が持ち上がる。平穏な日々を望んでいた小木曽はなんとか自身の昇進を阻止しようと奮闘するが、ある日上客・松金綾乃(岸本鮎佳)が購入した商品の不備を訴え、外商担当の海老沢(小松準弥)、松金の元担当の神山(猪野広樹)らとトラブルに。商品を購入した高級ブランドの店長・真壁(矢島舞美)とも対立、騒動は小木曽を巻き込んでどんどん大きくなって……というストーリー。
主演は、近年俳優としても幅広く活躍中の今野浩喜。しかし彼ひとりがフィーチャーされるのではなく、総勢14人の登場人物たちが繰り広げる“群像喜劇”といった感が強い。コンシェルジュ、外商担当、ファッションブランドや化粧品売り場の販売員たち……登場人物たちひとりひとりのキャラクターがはっきりしているだけでなく、彼らにもそれぞれバックボーンと悩みがある。ストーリーは小木曽が巻き込まれた外商顧客へのトラブルを中心に展開していくが、その途中でほぼ全ての登場人物たちの個々の部分がクローズアップされ、さまざまな形で解決されていく。また「今の仕事を好きだったはずなのにいつしか情熱が持てなくなった」「同僚を好きになれない」など、彼らの持つ悩みや葛藤が妙にリアル! コミカルな部分に笑っているうち、誰かしらの役柄に共感する観客も多いのでは? ちなみにこの舞台で1番のコメディリリーフとして強烈なインパクトを残しているのが、顧客・松金役の岸本鮎佳。今作の作・演出をつとめた彼女の多才っぷりにも注目だ。
そしてリアルと言えば、この作品が上演されているのが日本橋三越本店の中にある三越劇場というのが何とも! まるで本当に百貨店の中で、スタッフたちの裏側を覗き見しているような気分になれるのだ。また、音楽は全編ジャズバンド「Calmera」による生演奏。このゴージャス感もなんだか、百貨店を訪れたワクワク感を再現してくれているよう。
コメディとしてはもちろん、“お仕事”ものとしても楽しめる本作。この最高のシチュエーション、ぜひ劇場で体験して欲しい。『上にいきたくないデパート』は、8月29日(木)まで東京・三越劇場にて上演される。
取材・文:川口有紀
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