
カメラマン:石阪大輔
市井の人々の日常を独自の視点で切り取り、イッセー尾形がライフワークとしてきた一人芝居。その過去10年分のセレクト版を上演する、『イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる vol.4』(会場:有楽町朝日ホール)の上演が決定、イッセー本人に話を訊いた。
イッセーは10年前にフリーに。それ以降は演出家を置かず、すべてをイッセー自身が担ってきた。「作品とじっくり向き合う時間は長くなりましたね。自己対話というか、毎回ノートを開く度に、ここが違う、ここはやっぱりこうしようと思いつく。だからそこはもう諦めています(笑)。いつだって進行形で、これでおしまいってものがない。すでにラインナップは決めていますが、やっている最中もいろいろ思いついて、その都度変換していくでしょうしね。ただ人間の捉え方は変わっていないと思うんです。気になる部分が変わってきたというか、視野が移動したのかもしれません」
2022年はフリーになって10年、さらに古希(70歳)を迎えた記念の一年でもあった。「変わらなきゃいけないっていうのは、軽いプレッシャーとしてあるかもしれません。古希なんだから、もう二十歳じゃないんだから、みたいな(笑)。ただ年を取らない部分もあって、少年時代にザリガニを獲ったあの日の感じは、いつになっても新鮮に現れる。ただそれをそのままやってもなにも面白くないですし、演じているのはいつだって今の自分。つまりは今と過去を兼ね備えた一人芝居にしないといけない。過去一人芝居というかな(笑)。それが私の夢ですね」
ここ10年における最も大きな変化と言えば、やはりコロナ禍。笑いを追求するイッセーの作品には、どんな変化があったのだろうか。「笑いっていうのはひとつの認識なんですよね。〇〇があるから笑うのではなく、その人は〇〇に対して笑うという認識をしたんだと。認識があるから笑うのではなく、笑いそのものが認識。そして人っていうのは生きているだけで面白いし、笑う対象、笑う認識のものだっていう確信が私にはあって。私はその〇〇を発見しないといけないんですよね。それって普遍的なことであり、時代に影響されること。ただ思うんです、コロナの前と後で、世の中たいして変わってねぇなぁって(笑)。そもそもコロナで全部変わっちゃったにしてはいけない、人間そんなもんじゃないだろうという気持ちもあるんです」
コロナ前後のネタを織り交ぜ、ラインナップは当日までのお楽しみ。笑い納めはイッセー珠玉の一人芝居で!
取材・文:野上瑠美子
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